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大往生社会

 高齢化の進展で膨張が続く医療費。高齢者の幸福を追求しながらどう医療費を抑えていくかが大きな課題になっている。社会保障のデータを読み解くと、脳卒中を減らしながら大往生となる老衰を増やす対策が重要となることが見えてきた。神奈川、愛知など地域ぐるみの取り組みが一つのモデルとなる。

老衰死は高齢者で死亡の原因となる病気がなく、寿命を全うする例となる。都道府県別の散布図で横軸に脳卒中で亡くなる人の多さ、縦軸に老衰で亡くなる人の多さを取ると、左上が「脳卒中が少なく老衰が多い」目指すべき地域と言える。男女とも神奈川、愛知、和歌山が左上に入り、75歳以上の1人当たり医療費は全国平均より低い。

「じっと家にいないことが健康長寿の秘訣」。老衰が全国平均より男女とも1.4倍程度多い神奈川県茅ケ崎市に住む90代の男性は笑う。同市は75歳以上の医療費が全国平均より約13万円低い。

かかりつけ医がいる高齢者は9割で、在宅医療を支える診療所が多い。日常生活の延長で自宅などでみとる体制が根付いている。同じ湘南地域の藤沢市も老衰は多く医療費も10万円超低い。湘南地域は高齢社会のモデルになる。

愛知は県内市町村の8割で老衰が全国平均より多い。豊田市では中学校区ごとに保健師を配置。健康データを分析し、野菜を多く使う料理法の教室やラジオ体操などを展開した結果、野菜摂取量は増え、血圧の平均値も低下した。

高知県は老衰が少ない。病床数は全国最多で、最も医療費を費やしながら健康長寿につながっていない。福岡県は脳卒中、老衰ともに少ない。医療費は高知に次ぐ2番目で在宅医療のあり方が課題だ。

医療費が低い地域は高齢者の就業率が高く、保健所などの保健師が多い傾向もある。

高齢者の働く環境を整え、地域ぐるみで健康を管理することが突然死を減らし医療費も抑え、老衰による最期を迎える高齢者が増える「大往生社会」に近づくカギとなる。」

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日本経済新聞 2021年5月22日付より抜粋

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